コロナウイルスの影響で、リモートワーク界隈がざわざわしていますね。「 IT で!Web 会議ツールがあれば!!リモートでの打ち合わせも大丈夫!!!」かというとそうでもなくて、適切なハードウェアの準備も必要だったりします。
そこで、 Web 会議用に最高のヘッドセットを探したときの話を書こうと思います。
経緯(問題)
自社のインサイドセールスチーム、リモートワークの頻度が多いエンジニアチームから、リモートでの音声コミュニケーションにおける問題を共有されました。
インサイドセールスチームの問題
Web 会議ツールでの商談時に「周囲の雑音が相手に聞こえてしまうことがある」とのこと。
担当者のヘッドセット(マイク)が「周囲の人間の声(商談中、電話応対、雑談、etc)」や「執務エリアのドアを閉めたときの反響音」等を拾ってしまうことがあるようです。
エンジニアの問題(リモートワーク)
日常的に Zoom でリモートワーク(チームワーク)をしているエンジニアの方々も「音」関連のコミュニケーションコストに悩んでいて、「周囲の雑音を拾う」に加えて「相手の声が聞きとりづらい(マイクが拾えきれていない)」状況も多いとのこと。
これについては私も同じ経験をしたことがあり、以下の問題を感じていました。
- 声が聞き取りづらいので、普段以上に集中して耳を傾け続ける必要がある
- それでも声が聞き取れなかったときは、前後の文脈から何と言ったのか判断する(脳内補完)
- 最初は聞き直していたが、頻度が多いと言いづらくなってくる
- 過剰に集中している状態でノイズが入るとと、耳も頭も痛くなる
そのときは1時間のミーティングで、半日分の集中力を使い果たしてしまいました。。定例的にミーティングをしているチームにとっては死活問題で、これは災害と言ってもよいと思います。さらに怖いのが、原因側が災害に気づけない(聞き手のみが被害者)ことですね。
と、いずれもクリティカルな問題なので、リモートでの音声コミュニケーション品質を担保できるヘッドセットを調達することにしました。
要件は以下の2点です。
- 限りなく「装着者の声のみ」を拾う指向性の強いマイクを備えていること
- 関係者全員に配布するため、お値段が高すぎないこと
検証方法
インサイドセールスチームの執務エリアを再現し、「ヘッドセット装着者の声がクリアに聞こえるか」、「周囲の雑音を低減できているか」を検証するための計画を立てました。
検証用の音源(ノイズ)は2つ用意しました。
- Aさん(男性)の商談中の声
- Bさん(女性)の電話中の声
実際の執務エリアで、自分の口元(ヘッドセットのマイクの位置)にスマホを固定して音源を録音します。このとき別のスマホで騒音レベルも測定しておき(無料アプリを使用)、再生音量が同程度の騒音レベルとなるように調整します。
密閉感のある打ち合わせスペース(愛称:説教部屋)を使用して、外部の音をシャットします。
検証の様子(動画)は Zoom のレコーディング機能でファイルに残しておきます。①購入の説明材料(決裁者にも直接聞いてもらう)と、②定量評価に使用するため(※)、の二つの理由からです。
※②定量評価として、 Audacity でノイズの低減度合いを数値化する予定だったのですが、ヘッドセット装着者(私)がフリーにしゃべり過ぎて定点観測できるポイントが見つからず断念しました。。反省。。
検証結果
念のために記載しますが、これは私が用意した検証環境・検証方法における結果ですので、参考程度にとらえていただければと思います。
候補の選定
コールセンター用途で有名どころの以下3社から、¥5,000〜¥25,000の価格帯で3機種ずつ候補機を見繕い、計9機種のヘッドセットを検証対象としました。
- Jabra
- Sennheiser Communications
- Poly
各社ホームページに検証申し込みの Web フォームが用意されており、コンタクトをとると1週間ほど無料で貸し出していただけます。
Jabra の Engage 50 が最強だった
検証の結果、 Jabra / Engage 50 のマイク指向性が格別に強力という結論にいたりました。口元のマイク位置が数 cm ずれると装着者の声ですら拾わなくなると書けば、その指向性の強さが伝わるかと思います。
Engage 50 Mono(片耳のモノラル仕様)で定価 ¥24,000と少々お高いですが、導入効果は十分に得られると判断して 関係者の人数分購入してもらいました。
以下、実際に利用してもらっての感想です。
インサイドセールスチーム
- 自分たちでロールプレイをしてみて、周囲の雑音を拾わないことが確認できた。
- 同一拠点から複数人が Web 会議に参加する場合、自分の発言時以外はマイクをミュートにしていたが(別の人の声を拾ってハウリングするため)、 Engage 50 だとミュートにする必要がない。
エンジニア
- 相手の声のみがクリアに聞こえるようになり、不必要に集中する必要がなくなった。(長時間の Web ミーティングでも支障を感じない)
- 相手が Engage 50 を使っていない場合でも、声が聞き取りやすくなった。(これはイヤホンの性能?)
- 耳あてが気持ち良い。
個人的に「 USB Type-C 接続」であることも気に入っています。他の機種は USB Typ-A 接続で、 PC 接続時に変換コネクタを使う点が煩わしかったです。
検証してみての気づき
実機で検証することの意義を感じました。
最初は「単価 ¥10,000もかければ十分でしょ」とたかをくくっていましたが、中途半端な投資では問題を解決できなかったと思います。
また高価な機種でも「実際より声が低く聞こえる」ことがあったり(相手に与える印象が変わる)、「安価な機種よりも周囲の雑音を拾ってしまう」(マイク品質が良いがゆえ?)ケースもあったりして、これらはカタログからは見えてこない事実でした。
数が多くて大変でしたが、実際に検証することで納得のいく購入ができました。
まとめ
- リモートでも問題なく音声コミュニケーションをとるためのヘッドセットを選定した
- Jabra の Engage 50 が、マイク指向性の観点で最高の逸品だった
- リモートワークのためには十分なコストをかける必要がある
- 良いものは高い
- しっかりと検討・検証の時間を割くべき
ちなみに Engage 50 はしばらく在庫切れが続き、オンラインストアでの発注から納品までに1ヶ月ほどかかりました。リモートワーク環境は突発的に準備するのではなく、平時から経営レベルで計画的に整備を進めるべき課題ですね。
その後、沼へ
マイク指向性やノイズキャンセリングの仕組みを調べたり「 Jabra さんスゲー!!」とキャッキャしているうちに、ヘッドホンにも気持ちが向き始め、個人で Jabra / Elite 85h を購入しました。ノイズキャンセリングの優秀さと、装着→電源 On / 取り外し → 電源 Off の自動切り替えが気に入っています。
こちらのマイク指向性もなかなか良いです。ビルの外壁工事が相当うるさいなか Web ミーティングに使用してみましたが、相手には工事音が届きませんでした。
次は Master&Dynamic の MW65 が気になっています。沼に片足を突っ込んでしまいました。誰か助けてください。